自動制御入門(デジタル制御)


1.自動制御装置

1.1.自動制御
1.2.制御装置の構成
1.3.シーケンス図
1.4.シーケンス図記号
1.5.制御器具番号
  (JEM1090:2008より抜粋)

2.シーケンス制御

2.1.概要
2.2.シーケンス制御回路(例)
2.3.センサ
2.4.ブール代数
3.デジタル制御
 (コンピュータ制御)
3.1.コンピュータの構成
3.2.PLC制御
3.3.2進法と16進
3.4.2進法の数値表現
3.5.AD変換
4.フィードバック制御

4.1.フィードバック制御の概要
4.2.ブロック図(等価変換)
4.3.PID制御(一部未稿)
 
                     
参考図書

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新人の為の自動制御入門の為、初歩的な内容とする。また、ここではデジタル制御装置を主として説明する。



3.1.構成(コンピュータ制御装置の構成)

デジタル制御装置の構成

左図はデジタル制御装置の構成の1例であり、実際の制御装置構成は、目的・規模・メーカーによって異なる。
CPU・演算装置・故障診断 CPU(中央演算装置)を中心としてプログラムの実行を行う。
(1)CPU(詳細は、パソコンの学習(初級編):2.1.パソコン構成要素の項参照
(2)演算処理
 殆どのデジタル制御装置は、CPU装置とは別にシーケンスロジックを演算する専用素子を有している。
(3)故障診断
 演算不良、ハードウエア不良等の自己診断機能を有しており、その内容によって、
・全機能停止
・出力保持
・演算続行(アラームのみ)
等に状態遷移する。
メモリ 入出力状態、演算状態、制御の途中経過、プログラム本体等、様々な状態・データを記憶する。
メモリには、
・読み取り専用メモリ(ROM)
・読み書き用メモリ(RAM)
の区分がある。
詳細は、パソコンの学習(初級編):2.3.メモリの項参照
補助記憶装置 補助記憶装置は、補助メモリの他、外部記憶媒体として取り外し可能な機器もある。
・プログラムの保存、運転状態の記憶、制御装置再起動時の初期データ記憶など様々の用途がある。
入力部(AD変換) ・ON/OFF入力
 接点入力(ON-OFF信号)を入力し、デジタル処理後メモリの入力エリアへ書き込む。
・アナログ入力
 一般入力(1〜5V、4〜20mA等)の他に温度センサ(熱電対)の直接入力などの処理を行い、 A/D変換部へ渡す。
・A/D変換部
 入力部から受けた信号(アナログ値)をデジタルに変換し、メモリの入力部へ書き込む。
出力部(DA変換) ・ON/OFF信号
 メモリの出力エリアのON-OFF状態を出力部で電気のON-OFF信号に変換し、外部回路へ出力する。
・D/A変換部
 メモリの出力エリアの内容を、D/A変換し、アナログ出力部から電気信号(1〜5V、4〜20mA等)として外部へ出力する。
ヒューマンインターフェイス
(入出力装置)
下記のように様々な形態がある。
・モニタとKB(キーボード)・マウスの組み合わせ。(パソコン操作形態)
・タッチパネル式モニタ(オペレータコンソール形態)
・メータと押しボタンの組合せ。(メカニカル操作イメージ)
・本体直接取付式
・本体別置き式
伝送装置 近年のデジタル制御装置は、下記目的で伝送装置(LAN等)を有するものが多い。
・上位の制御装置との連携
・マンマシンインターフェイスの集合表示化
・他の自動制御ループとの連携、データの共有
伝送装置には、
・Ethernet
・FDDI
・GPIB
・RS232C
等の方式がある。。
用途、規模によって選択される。
入力モジュール 接点入力は一度フォトカプラで受け、ON・OFF状態を内部回路へ渡し、デジタル化する。

フォトカプラ:
発行ダイオードと、フォトトランジスタ(受光素子)からなる電子部品。
外部入力のON-OFFを光りを経由して伝えるため、外部のノイズ等電気的影響を受けない特徴がある。

(左図はイメージ図であり、実際の回路と異なる)
出力モジュール 接点出力についても、フォトカプラによる電気的絶縁を行っている例が多い。
他に、ミニチュアリレーを出力モジュール内に実装し、RY接点出力を行っている例もある。

(左図はイメージ図であり、実際の回路と異なる)



3.2.PLC制御(コンピュータ制御)  .

PLC @PLCとはプログラマブルコントローラの略で、シーケンス制御をコンピュータシステムで実施するもの3.1項のコンピュータ制御のひとつ。
APLCによるシーケンス制御ではラダーシーケンスと呼ばれる表記が使用される。
Bこの動作表現は、ハード回路のシーケンス記号とも、電子回路で用いられる論理記号とも異なる記号となっている。
C後述するモニタツールでのデジタル制御ロジックの画面表示、印刷処理などの負担を軽減するため、きわめてシンプルな記号となっている。
記号と表現ルールは、デジタル装置製造メーカーによって異なる。
PLCのハード構成 規模にもよるが、一般的なPLCは、電源、CPU装置、入力・出力ユニットがコンパクトに収められて、一体として設置出来るようになっている。
基本的構成は、3.1項で説明したコンピュータシステムの最小構成となっている。
タッチパネル タッチパネルとは、フラットデスプレイと透明感圧シートが一体となったもので、表示と操作が画面上の操作スイッチで視覚的に上で行う事ができる。
安価になっと事もあり、最近ではヒューマンインターフェースとして、タッチパネルを採用する事が多い。
利点
@スイッチ、表示器などを取り付けるためのハードウエアを作成する必要がない。
A表示内容変更、機能変更に容易に追従可能
Bグラフィックがカラフルで、基本的機能(押しボタン、スイッチ、メータなど)の表示・操作機能が標準パーツとして用意されている。
PLCの動作 PLCでは、左図の様な一連の動作を1サイクルとして、1msから数百msの周期で常時サイクリックに動作している。

PLCは一度起動すると、左記のようなサイクルをほぼ無限に繰り返し、ラダーシーケンス(制御)を実行していく
@自己診断機能
 PLC本体の故障診断を実行する。
 一部の自己診断は、制御ロジック演算中の実行されている
A入力処理を実行する。
 入力モジュール、伝送信号のデジタル処理データを入力処理でメモリに書き込む
B制御ロジックを実行する。(下記参照)
C出力処理を実行する。
 メモリの出力エリアを出力モジュールへ書き出す。
 出力モジュールはその信号を電気信号(アナログ信号など)に変換する。
C機種にもよるが、殆どのPLCでは緊急処理など、サイクル(周期)を待たず入出力する割り込み処理が準備されている。

自己診断機能(例)
@ハード構成異常(入力モジュール、出力モジュール異常)
Aメモリ異常
Bユーザプログラム異常(命令構成不備など)
C演算異常(参照アドレス異常、0割異常)
Dバッテリ異常
ラダーシーケンス ラダーシーケンスは先頭の行から順番に実行していく。
@AND・ORなどの条件判断ロジックでは外部入力信号は入力エリアから、その他の信号は指定されたエリアからデータを読み取りる。
A判断結果を指定された出力エリア(又は指定されたエリア)へ書き出す。
B以降、順番に(ENDまで)実行していく。
Cラダーシーケンスが終了すると、上項で説明したように、再度1行目に戻り、以降サイクリックに演算を繰り返す。

出力結果は、出力ユニットにて電気信号に変換される。
ラダーシーケンスのメンテナンス PLC制御措置は、デジタル制御ロジックの作成、メンテナンスの種のツールを持っている。
小規模のPLCでは、PLC本体の表面に、簡単な操作部をもち、ロジック作成、メンテナンスを行う機種もある。

  メンテナンスツールの機能(例、機種、メーカにより異なる)
@PLC装置のハード構成の設定
   ・本体メモリサイズ、メモリエリア
   ・制御周期、入出力周期
   ・入出力ユニット構成(A/D変換設定)
   ・設定内容の印刷

Aラダーシーケンス(ロジック)の作成
   ・入出力名称、信号名称の設定
   ・ラダーシーケンスの作成
   ・制御用パラメータ(タイマ、制御量設定)
   ・メンテナンス用コメントの記入
   ・ラダーシーケンスエラーの確認
   ・ラダーシーケンスの印刷
   ・信号名称リスト(呼び合いリスト)の印刷

B本体へのU/D(アップロード/ダウンロード)機能
   ・各種設定値のU/D
   ・ラダーシーケンスのU/D
   ・制御パラメータのU/D
   ・故障解析用ログのU
   
C本体動作状態の表示
   ・ラダーシーケンスの状態表示
    (図上での色換え、”1”、”0”での表示
   ・タイマ値、制御量の設定値、現在値の表示(工学単位変換)
   ・入出力状態のリスト表示(現在値モニタ)

D上記@〜C各種情報の外部記憶媒体(メモリ、HD,MO、FD等)への保存と再現




3.3.2進法と16進(HEX)  .詳細は、パソコンの学習(初級編):3.1.2進法について 3.3.2進法と10進法の変換について を参照

2進法

デジタル制御装置の内部処理はコンピュータ処理なので、全てのデータはON-OFFのビット処理及び2進法のデジタル演算処理を行う。
・メモリ処理の最小単位はON-OFFの変化を記憶する1単位で、”ビット”と呼ばれる。
・ビットが8個集合してバイトという単位で呼ばれる。
・2バイト又は4バイトで1ワードという単位で呼ばれる。
 (ワードの単位は、CPUが1操作で処理する単位なので、CPUの機能により決定されるが、ここでは、仮に1ワード=2バイト=16ビットで説明を行う。
ビットの重み
2進法では、数が”2”になると桁上がりするため、”1”の次は”10”となり、2は出てこない。
16ビット1ワードの場合、各ビットは、左図の様な”数の重み”を持っている。
2進法の簡単な計算
0+1=1
1+1=10
10+1=11
11+1=100
100+1=110
16進法 2進法のビット表現では、その数を表すのに不便であるため、4ビットを1桁とする16進でその内容を表す。


3.4.2進法での数値表現

整数 上記16進法参照
マイナスの値 の補数表現でマイナスを表す。
演算は、この値を使用して加算処理する。

詳細は、パソコンの学習(初級編):3.2.2の補数 参照
BCDコード コンピュータの数値表現でBCD(Binary Code Decimal)コード。
4ビットを1固まりとして0〜10の数を表現する。
10進法の1桁を4ビットで表していく。

.詳細は、パソコンの学習(初級編):3.4.BCD表現 参照

(2)BCDと2進法の比較表   

数値 ビット状態(BCD) ビット状態(2進法)
0000 0001 0000 0001
0000 0010 0000 0010
0000 0011 0000 0011
・・・ ・・・ ・・・
0000 1001 0000 1001
10 0001 0000 0000 1010
11 0001 0001 0000 1011
12 0001 0010 0000 1100
・・・ ・・・ ・・・
16 0001 0110 0001 0000
17 0001 0111 0001 0001
同じ"00010000"でもBDと2進法では意味が異なる。
浮動小数点 浮動小数点のデータは、16ビットでも表す事が可能だが、誤差が多いため、殆どの場合32ビットまたは64ビットで表現する。

(1)16ビットの場合
・正負判断:1ビット
・指数部:4ビット
・仮数部:11ビット

(2)32ビットの場合
・正負判断:1ビット
・指数部:8ビット
・仮数部:23ビット
浮動小数点の表し方(IEEE規格による)
(−1)S×1.M×2(E-127)
S:正否判定
M:仮数部
E:指数部

(3)64ビットの表し方(IEEE規格による
・正負判断:1ビット
・指数部:8ビット
・仮数部:23ビット
(−1)S×1.M×2(E-1023)

文字コード 印字出力、ディスプレイへの表示、通信出力など、入出力用で、数値もあるが、演算に使用される事はない。
文字コードの中に、印字装置及び通信装置への制御コードも含まれる。
詳細は、パソコンの学習(初級編):4.文字コード 参照

(ASCIIコードの場合)
上位ビット
制御コード 英数字・記号コード
000 001 010 011 100 101 110 111




0000 NULL DLE 空白 0 @ P ` p
0001 SOH DC1 ! 1 A Q a q
0010 STX DC2 " 2 B R b r
0011 ETX DC3 # 3 C S c s
0100 EOT DC4 $ 4 D T d t
0101 ENQ NAC % 5 E U e u
0110 ACK SYN & 6 F V f v
0111 BELL ETB ' 7 G W g w
1000 BS CAN ( 8 H X h x
1001 HT EM ) 9 I Y i y
1010 LF SUB * : J Z j z
1011 VT ESC + ; K [ k {
1100 FF FS , < L (逆スラッシュ) l |
1101 CR GS - = M ] m }
1110 SO RS . > N ^ n ~
1111 SI US / ? O _ o DELL
例)A(1000 0001)
   1(0011 0001)




3.5.AD変換

AD変換 4〜20mA、1〜5Vなどのアナログ(電気)信号をデジタル信号に変換する。
(1)積分型AD変換器
精度は高いが変換速度は遅い。
(2)逐次変換型AD変換器
 速度は速いが回路が複雑となる。

変換後のデータの精度は、変換回路にも依存するが、変換周期(変換のタイミング)と変換後のビット数(分解能)にも依存する。
AD変換 @センサの検知器で検知した信号は
A変換器で電気信号に変換される。
 電気信号は一般的に下記値に変換される。
 ・4〜20mA
 ・0〜5V(1〜5V)
 ・0〜10V
 ・±10V

Bデジタル制御装置の入力モジュール(AD変換器)により
 0〜4000カウントに変換される。
C0〜4000カウントを数値計算により、制御ロジックで使用される単位に再変換される。
量の分解能 アナログ値をデジタルカウントに変換すると、その最小変化は階段状になる。
その最小単位(分解能)は、
実測量MAX/カウント値MAXとなる。
左図例では100℃/4000カウント=0.25℃

一般的AD変換では12ビットへの変換処理が多い(最大4095カウント)が、最近では16ビットへの変換も増えつつある。

制御で計測量のAD変換値を使用する時、分解能に注意する。




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